【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

すっと後ろに下がり車のドアノブに手をかけると、そっと触れていた部長の手が下におろされた。

「沙耶、信じられなくてごめん。そして再会してからひどい事ばかり言ってごめん。どうしてもあの時沙耶に裏切られたって思いが強くてそれをぶつけてた。本当に悪かった」
昔のように、私の事を心底心配して、大切にしてもらってると誤解しそうな真剣な瞳に私は苦笑した。

「もういいよ。私も同じようにひどい態度をとったし」

「沙耶……」
小さく呼ばれた名前が、あの頃と同じ響きで泣きたくなる。
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