【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「何を一人でいってる?」
部長の手だと気づき、私は顔が熱くなるのを感じた。
嫌だ、不意打ち!
そんな簡単に触れないでよ!
ドキンドキンと胸の音がうるさい。
そんな私に気づいたのか、気づかないのかわからないが、部長はゆっくりと手を離すと私に微笑みかけた。
「行こうか」
そこへ、誰もいなかったフロアに、外回りから帰ってきただろう後輩の男の子が戻ってきて、慌てて私はその子をみる。
「あ、竹井くん、お疲れ様」
「部長も羽田さんおお疲れ様です!」
ニコリと笑った竹井君に、部長も「お疲れ」と労いの言葉をかけた。
「羽田、先に駐車場行ってて」
竹井君に聞こえないように、小声で言うと部長は竹井君の方へと歩いていき、進捗状況などの確認を始めた。
久しぶりに耳元で響いた声に、私のキャパはとっくに超えていた。
なんなの……?
上司と部下ってこんなに難しいの?
きちんと過去にケジメをつけてやり直しているつもりだったが、上司と部下というポジションにに私は翻弄されていた。