【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
落ち着かない気持で、地下駐車場のエレベーターホールの隅で小さくなって部長を待っていた。

音もなく開いたのだろうエレベーターから降りてきた部長に全く気付かなかった私は、後ろから聞こえたクスリと笑う気配に、勢いよく振り向いた。

その反動で部長の胸にゴツンと頭をぶつけた。

「いたっ……」
頭に手を当てた私に、部長は心配そうに私を見下ろした。

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫です」
少し恥ずかしくなり、小さな声で答えた私に、部長はホッとしたような表情の後、言葉を続けた。

「お前って昔からそそっかしい所あるよな」
そう言って笑った部長の笑顔は、仕事の時の作り笑いとは違い、本当の笑顔の様な気がした。私は頭を押さえながら、ぼんやりと部長を見上げた。
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