【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「あの……」
失ったものが私なのか、私の事で強くならざるを得なかったのか、その部長の真意がわからない。
でも、私は裏切っていない……。
私は悪くないけど、でも私のせいで……。
グルグルと考えを巡らせてると、部長がテーブル越しに私の薬指の先をキュッと握った。
「でも、今の俺を後悔していないし、昔より大切な物を守れるぐらい強くはなったと思うよ」
あの頃の贖罪なのか、何かわからないが少しだけ触れた指先に全神経が集まるのがわかった。
でも、その強さできっと大切な彼女を守っているのだろう。
そんな彼女が羨ましかった。
「大切にしてもらえる人は幸せでしょうね」
そう呟いて私は、小さく部長に笑いかけた。
「そうだといいな……」
そう言って部長は私の薬指を握っていた力を一瞬強めた後、パッと手を離した。
これで私も前に進めよと言われているようで、少し悲しい気持ちを私はギュッと押し込めた。