凛々しく、可憐な許婚
昼になり、雅臣と尊、咲夜の3人は学食に向かった。

そこには、春休み中にも関わらず、数十人の部活動生がいた。

しかし、誰も3人には近寄ろうとはせず、珍しいものを見るかのように遠巻きに視線を寄越していた。

「うわ、何あそこ。顔面偏差値半端ねえ」

「"姫"の前にいるイケメン誰?雅臣センセが霞んで見える」

生徒の呟きを聞いて、雅臣がため息をついた。

「あんたら二人に囲まれて、俺、いたたまれないんだけど」

ここでも、咲夜が笑って首をかしげる。

それを見た尊が、いとおしげに口角をあげて微笑する。

学食にどよめきが起こった。

思春期の生徒達には、それだけでも刺激が強すぎるくらい破壊力のある二人の笑顔。

「だから、お前ら、それがヤバイんだって。もっと自覚してくんなきゃ、教師も生徒も勉強に身が入らなくなるぞ」

何もかも見透かしたような尊と違い、咲夜は何のことかさっぱりわからない様子だ。

「いつ何どきでも生徒の視線を意識して気を引き締めてかかれってことですね」

呟いた咲夜の頭に、尊が手を伸ばして頭をポンポンと撫でた。

「そう、これからは笑顔の安売りをして、いくら高校生でも男を誘惑しないで」

その様子に、学食からあちこちで溜め息が漏れたことは言うまでもない。

美しすぎる"2年4組の先生&弓道部顧問"の"姫と王子"の噂が学園中に広がるのも時間の問題であった。
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