凛々しく、可憐な許婚
始まりの挨拶が終わると、生徒達は緊張を解き、咲夜と尊のもとに駆け寄ってきた。

「光浦先生、鈴木先生って、この写真の生徒でしょ?」

長澤が指差すのは、8年前に尊が全国大会で準優勝したときの写真だ。

道場には、歴代の先輩の表彰式の写真や新聞記事がラミネートして飾ってある。

中でも一番多いのが"鈴木尊"に関する写真や記事だった。

「そうだよ。当時の鈴木先生はこのはな学園のエースで、全国的にも有名人だったんだから」

「会ったことはなくても、このはな学園の鈴木先輩のことはみんな知ってるもんね。イケメンの実力者だって」

長澤以外の生徒も目を輝かせて尊を見つめた。

「僕なんかより、光浦先生の方がよっぽど目立ってたよ。的前に立てばすべて皆中。鋼の精神力を持つお姫様って有名だったんだ」

「それは今でもそうだよ。"姫"は絶対に的を外さないし、動揺しないから、他所の先生や生徒達から"クールビューティーさくや"って言われて讃えられてる」

「讃えられてるんじゃなくて、恐れられてるんでしよ」

咲夜が笑うと

男子生徒が真っ赤になって

「ちがうよ、"姫"が鈍感だから気づかないだけで、俺たちがガードしてるんだ」

男子生徒の言葉に、一瞬、尊の目が光った。

「もしかして、鈴木先生も光浦先生のファンだったとか」

女子生徒の一人が、肘でツンツンと尊をつつく。

「そうだよ、高校時代からずっとファンだ」

素直に認めて微笑む尊に

生徒達から悲鳴が上がる。

「かー、鈴木先生、直球だね。姫が固まってるじゃん」

咲夜はいつもと変わらないような表情に見えるが、実は動揺しているということを、付き合いの長い部員たちは知っていた。

「もう、遠慮しないことにしたんだ。みんなも応援してくれよ」

「マジかー。先生の態度次第だな」

どこまでが本気かわからない尊と部員達の言葉を遮って

「はい、冗談はここまで。今から立射四本ずつ。5人一組で団体戦の模擬をするよ」

と、咲夜は雑談の終わりを宣言した。

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