凛々しく、可憐な許婚
結納式は、両家の両親と咲夜の祖父、尊,咲夜でとり行われた。

仲人を立てない略式の結納式だが、段取りは大切だ。

尊の父である道真が式を進行していく。尊の母:友子が咲夜の前に結納品を並べ、咲夜の父と咲夜がお礼を述べて受け取る。続いて咲夜の母:万智子が女性側の結納品を尊の前に並べ、道真と尊がお礼を述べる。

そしてエンゲージリングを尊から咲夜、咲夜から尊に渡す。

薬指に輝くキラキラとしたプラチナリングを眺めて嬉しそうにしている咲夜を見て

"ようやくここまで来た"

と尊は感慨一入だった。

そして和やかな中、食事と歓談を終えると、つつがなく結納式が終了した。

「本日はありがとうございました。結婚式もよろしくお願いいたします」

尊の晴れ晴れとした姿に、咲夜の祖父である義明も満足気に頷いた。

「私が送り込んだ刺客も難なくかわせたようで何よりだよ」

「刺客,,,ですか?」

「ああ、吉高くんを使って少し咲夜に揺さぶりをかけてみたんだがね、今日の咲夜の表情を見たら、自力で君に事実確認できたのだとわかったよ」

何か裏のありそうな吉高の行動だったが、義明が絡んでいたとは思わなかった。

公約達成のあともテストは続いていたらしい。もしかしたら、結婚式の前日まで続く可能性がある。

「咲夜は私の厳しい躾のせいで、家族や友人にすら思っていることを口にせずに黙ってノルマをこなし、感情的な面には蓋をしてやり過ごすことが多かった。交際期間がなく許嫁になった君に対してはなおさらだったろう」

義明が続ける。

「君は男性としても、一人の人間としても素晴らしい人物だ。光浦家の後継者候補として我慢を重ねてきた咲夜をこれからも支えてくれるとありがたい」

年下の者に惜しげもなく頭を下げる義明は間違いなく人格者だ。

「身に余る光栄です。これからも精進致しますので安心して僕に咲夜さんをあずけてください」

堂々と言い切る尊は自信に満ち溢れていた。
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