凛々しく、可憐な許婚
「へえ、広いんだね。僕も一緒に住めそう」

16時、マンションに来た真那音は開口一番そう言った。

「部屋は余っているからいつでも泊まりに来ていいよ」

「ふうん、新婚さん(仮)なのに、僕のこと邪魔じゃないんですか?」

「真那音くん!」

言葉と態度にいちいち刺がある真那音を言いとどめようと、咲夜が間に入る。

「俺と真那音くんは初対面だ。俺は君のことを知りたいし、義弟としても仲良くしていきたい。そのためには一緒に過ごす時間も必要だろ」

「プライベートでは"俺"って言うんですね。なんか意外,,,ねえ、ここ座ってもいいですか?」

真那音はリビングのソファを指差して言った。

生意気な口を利きながらも、いちいち断りをいれてくるのだから育ちのいい証拠だ。

「俺は紳士ではないし、いたって普通の育ちだ。俺には敬語も必要ないよ」

「真那音くん、ケーキ食べる?」

「食べる」

強がりながらも、咲夜の質問に即答する様子は子供らしい。

「手伝うよ」

そう言って、アイランドキッキンに立つ咲夜のもとに赴き、甲斐甲斐しく世話を焼こうする尊の姿を真那音が見つめた。

「亭主関白の上から目線、ではないんだね」

と、ぼそっと呟き、テレビのリモコンに手を伸ばした。
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