凛々しく、可憐な許婚
「尊さん、仕事して勉強して弓道して、ゲームする暇とかあったんですか?」

「さっきも言ったけど、時間を決めてやれば、娯楽だって立派なストレス解消になる」

「でも、学校でメディアコントロールとかうるさいし」

「君の自慢のお姉さんだって、恋愛小説とか読んでる時間があるんだよ」

ブッと、咲夜が飲みかけの紅茶を吹き出しそうになる。

「た、尊くん、知ってたの?」

「君の部屋の本棚に並べてあるからね。この間、俺も借りて読んだ」

「えっ、読んだの?」

慌てる姉とそれをからかう、その婚約者。

真那音にとって、"二人は特別で完璧な大人"だと思っていた。

真那音の知る姉は、いつも凛として優しく、どんな難題でも飄々とこなしてしまう目標とすべき人物だった。

そのお相手として選ばれた尊という人物も、W大の大学院を出て、MBAを取得して、弓道も6段教士で。

その完璧な二人が、今、仲良さそうにゲームや恋愛小説の話をしている。

感情表現が乏しい姉が照れている。

「姉さんの照れた顔、初めて見たかも。恋愛小説のヒーローなんかより、尊さんの方が触れる分いいんじゃない?」

真那音は、思わず、姉をからかって反応をみたいと思った。

「しょ、小説は別腹なの」

「え?別腹なんて、俺、妬いちゃうかも」

「た、尊くんまでからかわないで下さい」

全く男性に興味がないと思っていた姉が、男性しかもイケメンと暮らすなんて大丈夫かと心配していたが、この人とならきっと幸せなのだろう。

姉の顔を見て、真那音は十分納得した。

「さあ、真那音くん、お風呂に入っておいでよ。その後は、こっちのサッカーゲームやろう」

「はい。必殺技教えてください」

そういうと、真那音は急いでバスルームに走っていった。
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