凛々しく、可憐な許婚
「じゃあ、僕は宿題して姉さんの部屋で寝ます。尊さん、一緒にゲームしてくれてありがとうございました」

21時、真面目な真那音は、決められた時間をきっちり守り,持参したリュックに入れた宿題を持って、咲夜の部屋に引っ込んで行った。

その表情には、もう尊への警戒心や不信感といった感情は見受けられなかった。

「弟って可愛いんだな」

「でしょう?でも、うちの真那音くんは特別だと思うんです。赤ちゃんの時なんて天使だったし。今でもとっても姉思いの自慢の弟なんです」

うっとり話す咲夜は立派なブラコンだ。

とはいえ、咲夜は尊と打ち解けるまでは、他者にこうした本音を語ることはなかったのだが。

「そんなに咲夜に思われて、俺、妬いちゃうな」

リビングのソファに咲夜と並んで腰かけていた尊が、咲夜の額に自分の額をくっつけてきて言った。

「お、弟ですよ」

「弟でも妬くよ、俺が一番になりたい。まあ、弟とはこんなことできないだろうけどね」

尊は、そのままの態勢から咲夜の唇を奪うと、舌を絡める深いキスをしてきた。

朝からずっと二人きりになれなかったのだ。今日は婚約が正式に成立しためでたい日だったはず。

しかし、尊は、咲夜の祖父、両親だけでなく真那音という、咲夜の大切な人に認められた現実を手にして満足でもあった。

「尊くん、真那音くんがいるのに,,,」

「ごめん、我慢できなかった」

尊は満足したのか、立ち上がって鼻唄を歌いながらゲームを片付け始める。

その様子を見て、咲夜も笑顔になり、出ていたコップや食器を片付け始めた。

今日は結納式で緊張していたはずなのに、真那音のお陰でなんだか和やかな1日となってしまった。




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