凛々しく、可憐な許婚
一方の尊は、井上から放課後の生徒指導室に呼び出されていた。

「先生、わかったでしょう?光浦先生はかなりの男好きなの。騙されてるんだから、早く気づいて別れてよ」

井上は生徒指導室にやって来た尊を見るなり、入り口のドアを閉めて尊に抱きついてきた。

生徒指導室は、生徒のプライバシーを守るために防音になっており、滅多に人が来ない奥まったところにある。

使用するときは、教師2名が立ち合うことになっていて、どちらかの教師に話を聞かれたくないときは、相談にのらないほうの教師が隣の部屋で待機することになっている。万が一間違いが起きないための配慮だ。

つまり、

今、尊と井上は二人きり、誰にも邪魔されない状態ということになる。

「どういうつもりですか?僕と光浦先生のこと、どうしてあなたが知っているんですか?」

机に押し倒されるような格好になり、井上に胸を押し付けられても、平然として顔色ひとつ変えずに尊は言った。

「鈴木先生のことが好きだからに決まってるじゃない」

「会ったばかりの僕の何を知っているって言うんです?勘違いで婚約者持ちの男性を襲うなんてあなたの立場が悪くなりますよ」

同じようなことを咲夜にしてきたはずの尊だが、今はそれを責める咲夜は不在だ。尊は苦笑した。

「パパがこの学園の理事長と知り合いだから大丈夫よ。それに、私、鈴木先生のこと4年前から知っているの」
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