凛々しく、可憐な許婚
「満里奈ちゃん?」

ノックのあと、生徒指導室のドアが開いた。

尊が目を向けると、そこには、愕然と目を見開いて立ちすくむ咲夜と田村がいた。

「光浦先生、田村先生、私、鈴木先生と付き合ってるんです。無理やりじゃないんです。今見たことは内緒にしておいて下さい」

井上は真っ赤になって、開かれた胸元と乱れたタイトスカートをなおしながら言った。

咲夜はシャツを乱した尊を見てその場を駆け出した。

「鈴木先生、井上先生の言っていることは本当なんですか?そうだと言われても、学校の生徒指導室でこのようなことをされていたとなっては大問題ですよ。学園長に報告させて頂きます」

薄気味悪く微笑む井上とは逆に平然とした鈴木。

対称的な二人に田村は顔をしかめた。

田村は生徒指導をしている。今回は、咲夜のクラスの中川満里奈から相談事があると言われて、咲夜と二人で約束の時間にここに来たのだ。

それなのに生徒はおらず、情事のあとを見せびらかすような教師が二人。

田村は、鈴木に言い寄る井上のことを、スキンシップが多いとは感じていたが、それは職員室内だけでのことだったし、呆れこそすれ嫌悪感は感じていなかった。

しかし、鈴木が井上に好意を抱いているようには全く思えなかった。

むしろ、咲夜の婚約者は鈴木ではないかと疑っていたくらいなのに。

「学園長室にいきましょう」

井上に手を差し伸べるでもなく移動を開始した鈴木を田村が嗜める。

「彼女ならフォローしてあげなさいよ。欲望だけなんて最低ですね」

「弁解する気にもなりません。早く行きましょう」

田村は、倒れていた井上を立たせると、自分が着ていたジャージの上着をかけた。

「ありがとうございます。尊さん、照れているだけなんです」

自分達がしていたことを棚にあげて、はにかむ井上に田村は呆れるやら感心するやら複雑な気持ちだった。
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