凛々しく、可憐な許婚
「その愛する人を罠に陥れようとしている奴が聞いて呆れる」

そう吐き出す尊の目は笑っていなかった。

「僕は不服ですよ。こんな茶番に巻き込まれた上に、大切な許嫁まで傷つけて絶対に許せない。自己満足もいいところだ」

甘さの全くない冷たい目が、井上の瞳を射ぬいた。

「こんなことが学園の生徒や父兄にバレたら鈴木先生もただではいられませんよ」

さっきまで泣き真似をしていたとは思えない井上が不適に笑う。

「責任さえとってくれれば丸く収まるんですよ?ね?」

尊の腕にすり寄る井上の腕を尊が払いのける。

「責任取るも何も俺は何もしていない」

「目撃者が二人もいるのに言い逃れできるはずないでしょう?ねえ、光浦センセ」

俯く咲夜は選べる言葉を持っていなかった。

尊は、PHSよりも若干小さめの機械をポケットから取り出した。

尊は無表情にその再生スイッチを押した。

"嘘よ、私のこと抱きたいんでしょ?"

",,,どんな手を使っても尊さんを手に入れる。いつまで強気でいられるかしらね"

先ほど生徒指導室で展開された修羅場が音声で再生される。

もちろん、咲夜への愛を叫ぶ尊の言葉もバッチリ録音されている。

真っ赤になる咲夜と驚く田村。ニヤニヤと笑う学園長。

「俺があんたの短絡的な思考に簡単に騙されると思っていたのか?俺はあんたを一発で叩きのめす方法を考えていた。降ってわいたチャンスはものにさせてもらう」

井上の行動を怪しんだ尊は、生徒指導室に入る前に、小型の録音機のスイッチを入れていたのだ。
< 95 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop