凛々しく、可憐な許婚
「そんな、私、尊さんが好きなの。尊さんじゃなきゃ嫌なの。ねえ、私の方が可愛いし若いよ。こんな女と結婚なんてしないで」

「咲夜を馬鹿にするな。こんな卑怯な真似をするあんたなんて足元にも及ばない。あんたの思い込みで周りを巻き込むな」

学園長はため息をつくと、どこかに電話をかけた。

すると、あっという間に秘書の渡辺が現れ、ガックリとした井上を学園長室から連れ出した。

「田村先生、内輪の問題に巻き込ませてしまってすみませんでした」

先ほどの黒い尊はすっかり鳴りを潜め、いつもの王子スマイルで尊は田村に頭を下げた。

「光浦先生の許嫁ってやっぱり鈴木先生だったのね。溺愛ぶりにびっくりしちゃった」

ICレコーダーの言動、学園長室での発言を思い出して咲夜は真っ赤になった。

「井上先生は、理事長の知り合いの娘さんで、是非にと頼まれて採用したんだ。やっぱりコネ採用なんてするものではないな」

学園長は、井上が高校で一目惚れした尊に随分執着しているようだ、と理事長から聞いていたらしい。

しかし、大学時代も男をとっかえひっかえしていたし、尊への表だった行動もなかったため問題ないだろうと判断し、採用したようだ。

学園に就職してからは、事務室に入り浸ったり、理事長から尊の情報を聞き出そうとする行動が目立ってきた。

3人が話をしていると内線電話が鳴った。

学校帰りに二人の住むマンションまでつけていった井上が二人の婚約を知って逆上し、今回の事件に至った、と井上から事情を聞いていた学園長秘書の松浦から連絡だった。

「それでは、私は中川さんから話を聞いてきます。さっきの話が本当なら進路相談も残ってるでしょうし、嘘ならその理由を聞かないと」

そう言って田村は学園長室をあとにした。

その後判明したのは、中川は井上の従姉妹で、今回の呼び出しの件と咲夜に不利な噂を広めるようにと命令されたということだった。
< 96 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop