凛々しく、可憐な許婚
「ところで咲夜ちゃん、婚約者がいながら吉高先生を誘惑しているんだって?」

学園長がいきなり話の矛先を変えたので咲夜は驚いて顔をあげた。

「い、いえ、それは誤解です。勘違いされるような私の行動にも責任はあるのですが、、、」

ばつが悪そうな咲夜の言葉を尊が引き継いだ。

「それについては俺が説明するよ」

尊は、歓迎会二次会での前後の出来事を、学園長である父:道実に説明した。

「そうか、咲夜ちゃんからやきもちを焼いてもらえるほど尊も惚れられたか」

道実のからかうような言葉に咲夜が顔を背ける。

「実は、これも井上先生が広めた噂だ。教師だけでなく、生徒達から父兄にまで拡散させて光浦先生の評判を落としたかったらしい。教師と生徒には事実無根だからこれ以上拡散しないように念を押しておいたから心配するな」

咲夜は、噂が落ち着くまで傍観者を決め込むつもりでいたが、早々に解決してもらえそうで安心した。

「これだけの問題を起こしたんだ。井上先生は解雇する」

「一年三組の担任はどうするんですか?」

咲夜の心配に

「尊にやってもらう」

と道実が笑顔で答えた。

「お前たちがなるべく一緒の時間を持ち、お互いを知ることができるようにと、同じクラスの担任・副担任にしたが、夫婦になってしまっては色々と都合が悪い。だから、夫婦であることは来年度まで隠そうとお願いしていたが、こんなことになるのなら早々に公表した方がいい。同じクラスを受け持たなければ、夫婦で同じ学校の教師でも問題はないからな」

咲夜も今回の噂が立ったとき、本当のことが言えなくて困っていたから、学園長の言葉を聞いてホッとしていた。

「まあ、しかし、あんな若い子に迫られて誘惑されない尊は鋼の心臓の持ち主だな」

「咲夜ごめんな。陥れられたとはいえ、あんな場面を見せたり、聞かせたりして」

「ううん、井上先生魅力的だもの。尊くんが誘惑されるのも仕方ないのかなって一瞬思っちゃった。信じなきゃいけないのに私こそごめんなさい」

尊を信じたいと思っているのに、見るに耐えなくてつい逃げ出していたと咲夜は語った。

「だけど、これで学園でも咲夜が俺のものだって堂々と言える。井上には憎しみしかないけど、それだけは感謝だな」

尊が咲夜を抱き寄せると

「こら、父親で学園長の私の前でイチャつくのはやめなさい。仲がいいのはわかったから」

咲夜は慌てて体を引こうとするが、尊がそれを許さなかった。

「父さん、学校で不埒なことをしたら責任を取らなければならないのでしょう?俺は喜んで責任をとるからイチャつかせてもらう」

「バレないように上手くやれよ」

微笑み合う二人は間違いなく親子だった。





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