主任、それは ハンソク です!

「むしろ、急に誘ってつき合わせた俺の方が悪かったわけだし」
「へ?」

 またしても私の間抜け声に主任は笑うどころか。

「そもそも、寝不足の人間に酒なんて飲ませる事自体、社会人としてやってはいけないことだ」

 徐に席から立ちあがって。 

「返って、すまなかった」

 私よりもきっぱりと深く腰を折る。

「も、やめてください! あ、あたま、あげてっ!」

 主任が顔を上げる、も。なぜか気まずそうにこちらから視線をずらした。

「……その、何か、ご家族から、言われなかったか?」
「いいえ、大丈夫です」

 ちゃんと笑えて言えてるかな、私。

「いや、実は、その俺が、ヨーコさんのご家族に、初対面なのに、ずいぶんと、失礼なことを言ってしまったもんだから」

 いやいや、それを言うなら父や祖父母の方がよっぽど失礼だったはず。

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