主任、それは ハンソク です!

 再びパソコンと向き合う主任に、ためらいながら、声をかける。

「……あの、主任」

 ガシガシとキーボードを打つ音だけが私と主任の間を流れている。

「あ、あの」

 不意にその音が止んだ。

「どうした?」

 ほとんど叫ぶみたいにして頭を下げた。

「昨晩は、すみませんでしたっ!」

「……何がだ?」

 私が、え? と間抜け声と一緒に頭を上げると、主任が苦笑している。

「あれは、ヨーコさんが謝ることじゃないよ」

 今、主任。私の事、ヨーコさんって、言ってくれた。

 ちゃんと、覚えて、くれてるんだ。どうしよう、こんな時なのに、嬉しすぎて泣きそうになる。

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