主任、それは ハンソク です!

 もぐもぐと口を動かしつつ、なおも話し出す久住先輩に紙ナフキンを手渡す。もう、食べるかしゃべるかどっちかにしないと。

「意図せず覗けちゃったんだよね? 得野ちゃんは」

 おずおずと頷く、と。

「……私ってさぁ、ギリなんだけど、いわゆるバブル世代なんだ」

 久住先輩はそういうと、ずずずとシェイクをすする。

「田舎短大卒のくせに、そこそこ大手の総合職で本社採用されたんだけどね」

 日紅総業ってわかる? とか呑気に聞いてくる。知ってるも何も、件の清州産業をも遥かに凌駕する、いわゆる財閥企業だ。

「バブルの頃はさぁ、就活事情が売り手市場とか言われてね、ちょっと見栄えさえ良ければ、みんなイケイケドンドンで即採用だったのよ」

 突然、久住先輩がはぁっと大きなため息を吐いた。

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