主任、それは ハンソク です!

「洋子、ちょっといいかしら」

 のそりとベッドから起き上がると、いいともだめとも返事する間もなく、母が入ってきた。その手には、サンドイッチと麦茶を載せたおぼんを携えて。

 父や祖父母の癇癪や八つ当たりで、私が夕飯抜きになったとき、母は必ずこれをこっそりと持ってきた。
 正直それは、子ども向けにしては少しきつめの辛子マヨネーズとハムのみの、簡単なものだったけど、幼い私はそれを美味しいおいしいと言って食べた。

 美味しいと言わなければ、二度と作ってもらえないかもしれないと思って。

「あのね、洋子」

 これから始まるのは、母がこの家で自分の立ち位置を守るために行う、私へのしつけだ。

「お義父さまもお義母さまも、悪気があって言っているわけじゃないのよ? そこは、わかってるわよね?」
「……うん」

 私の返事を聞くと、それまでは能面のように無表情だった母が、途端に笑顔になった。

< 130 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop