主任、それは ハンソク です!

「……どうした?」

 主任が怪訝そうに、私をのぞき込むけれど、何でもないです、とだけ伝える。
 大丈夫、こういう時、淡々と喋られるのが私の唯一の強みだ。

 結局、お昼の会食は私のポスター案どころか、なぜカジタツさんが『女装しているのか』についての説明会になっていた。

                  *

「あら? もしかして、……えーっとぉ」
「得野です。お久しぶりですね、野津さん」

 以前、同じ派遣先で一緒だった例のイケメン大好きさん。今日は胡蝶庵のホール担当してるのか。彼女もご多分に漏れず、ちょっと引きつったような笑みを浮かべていた。

「そうよっ、そうそうっ! 得野さんよ、とくのさんっ。……あ、そうか。もしかして、今週末の下見、とか?」
「えー、下見って何ですかぁ?」

 ちょっとお道化た風に清住さんが話に割り込んできたから。

「ああっと、いえ。なんでもないです。というか、そんなんじゃなくて、今日は仕事の……、あれ? 仕事、でしたっけ?」

< 138 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop