主任、それは ハンソク です!

「……俺、いや。私は、非常識極まりないことは重々承知しておりますが、それでも、得野家の皆様にどうしてもお伝えしたい事があって、今日、この場に参りました」

 すごく、改まった口調の主任は、普段の仕事モードとも違う、落ち着きのある上品さがあって、たぶん、これが本来の彼の姿なんだろうな、と、私は他人事のようにぼんやりと思った。

「得野家のお嬢さん、洋子さんと、正式に結婚を前提としたお付き合いをさせていただきますので、そのご挨拶に」

 ……ん?

 次の瞬間。
 やっぱり主任に殴りかかろうとする祖父を、祖母や父母が背後から、廊下からはさっきのセキュリティポリスさん達が、各々止めようと飛び掛かる様を。

 私はまるで、映画のワンシーンか何かのように、フリーズしたまま傍観していた。



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