主任、それは ハンソク です!
14 / 主任、ほんとにそれでいいんですか?

「で、そのオチが、その目の周りの痣ですか。今どき漫画だって、そんなベタなのつけませんよ。まったく、どこの馬鹿ですか」
「おまっ、バカって!」
「まぁまぁまぁまぁ、キヨスも、もう、それくらいにしておやんなさいって。それでも、結果オーライだったんだからさ、とりま、よかったじゃん。ね、トーゴちゃん」

 主任の家は、元々彼らのたまり場になっていたらしい。
 その証拠に洗面所には“カジタツ専用”と殴り書きされたかごの中に、相当使い込まれたアメニティーグッズがびっしりと入っていて、かと思えば。
 茶の間には“清住”と刺繍された会社支給のえんじ色のエプロンが、何枚か無造作に積まれている。

 そんな勝手知ったる我が家同然の彼らの声が、ずっと喧しく茶の間から漏れ聞こえてくるたびに。

「……す、すみませんんん、うちのカジタツさんがぁああ」
「あ、ほら。そんな、気にしないで。むしろ、偉人の方が酷い事言ってるんだから、ね? と、とく、のさん? も、ごめんなさいね。偉人には後でしっかり」
「いえいえいえいえいえいえっ! 清住取締役は、なんっにも悪くないですっ!悪いのはうちの馬鹿カジタツさんだけですっ!」

 そうして、よよと本気で泣き崩れる『チコたん』こと梶山紗智子さんを清住さんの奥さん、美智留さんが苦笑しつつも慰めるという謎図式が、さっきから延々とキッチンで繰り広げられている。

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