主任、それは ハンソク です!

 はい、と小さく返事をした、その時。私のお腹がくぅと鳴った。
 恥ずかしくて赤面していると、主任がすかさず「ここのイチオシ」を頼んでくれた。

 主任のイチオシは外れがない。

 今までだってそうだ。主任が仕掛けたスーパーの「バイヤーのイチオシコーナー」はいつも大盛況だし、定例会で食べた、コリコリした食感がくせになる三種の軟骨盛合せも、昆布と飛魚の風味がしっかり効いたあの出汁巻き卵も。

 そして、ハンソク。

 最初は、販促の文字すら見当がつかなくて、いざ始まれば自信もなくて。
 でも、主任はきちんと拙い私の手を引いて、ここまで引っ張ってきてくれた。時には飛び上がるような大声で、時には囁くような優しい声で、私にエールを送り続けながら。

「お、来たぞ」

 目の前にそっと置かれたのは、バラ色のローストビーフが溢れんばかりに挟まれた、クラブハウスサンドウィッチ。実物を見たのも食べるのも、もちろんこれが初めて。
 こんがりきつね色に焼かれたイギリスパンには、パンとお肉がバラバラにならないようにピックが刺さっていた。そこにはオリーブの実も一緒に差し込まれていて、ネットやテレビで見かけるそれとまるで同じ。
 何だか食べるのがもったいない。

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