主任、それは ハンソク です!

『お前がこんな親不孝者だとは思わなかった』

 思わず足が止まった。

『今まで育ててもらった恩を仇で返す様な子に育てた覚えはないよ』

 不意に聞こえてきた言葉は、あの場で罵倒されたもの。

『どうせ今に罰が当たるよ。ろくな死に方しやしないさ』
 
 どれも憎悪が含まれたものばかりだ。

『……でもね、洋子』

 ふいに。

『今なら、まだ間に合うから』

 私に絡みついた家という鎖が、私を引き戻そうとしている。

『お母さん、一緒に謝ってあげるから』

 咄嗟に、刷り込みの文字が頭をよぎった。それは十分に分かっているけれど、この期に及んで私自身がまだ揺れている。

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