主任、それは ハンソク です!
そんなくだらない事で、お互い楽しい時間に水を差される方がよっぽど嫌じゃないか、と。自分だけじゃなくて、私の事まで考えてくれた上でのことだったから、本当に嬉しかった。
このことを彼のお母さんに伝えたら、父親のふるまいを見ての反面教師かもしれない、と言ってコロコロと笑っていた。
彼のお父さんはとにかく酒の席で注いだり注がれたりが大好きな人で、その反面、もう飲めないという人に、更に強要するような面もあったのだとか。
彼は、そういう父の行いが心底許せなかったようで、何度もそれでぶつかりあったらしい。
何とも彼らしいエピソードではある。
「……でもなぁ、ホントあいつ等、我儘で容赦ないからなぁ」
そう心配そうに呟くと、ビールを煽った。彼の喉仏が勢いよく上下して、ぷはっと気持ちよさそうにグラスから口を離すのを横目で見ながら私は苦笑する。
「ホント、大丈夫ですから」
鈴原家の皆さんがこっちに来たがっているのは、観光というのは口実で、私の実家への正式な挨拶が目的。
本音は、東吾さんと私が家格的に釣り合うかを直接見定めたいんだと思う。絶対そこは避けて通れないと思っていたから、覚悟はできてる……つもり。