主任、それは ハンソク です!

「こ、今回の件だって、主任が助けてくれなかったら、たぶん、もう、ずっと今までのままだったかなぁ、って思う、し?」

 俺は意を決するとキッと顔を上げて、彼女の両肩をわしりと掴んだ。

「ヨーコさんっ、今日の俺の言葉、覚えてる?」
「きょ、今日ぅ……?」

 彼女の視線が中空をうろうろと彷徨っている。頭の斜め上あたりにアスタリスクが明滅する幻まで見える。それと同時に、俺の中の何かのパラメーターがすごい勢いで減っていく。

「お、俺は、少なくともヨーコさんに、自分の気持ちを伝えたつもりだったんだが」
「じぶんの、きもち」

 彼女の小さな呟きが俺の耳をくすぐる。こんな状況でも、声すら可愛いとか、俺はバカか? 

「そうだよな。上司から一方的に言い寄られて、本人を前に明確な拒絶は、やっぱり無理だよな」
「いい、よられて?」

 眉根を寄せて考え込むその姿にすら心奪われて乱されている。もう、いい加減死んだ方がよくないか? 俺。

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