主任、それは ハンソク です!
今は、俺の左目の周りが少し腫れている程度だ。応急処置でしっかり冷やしたから、まぁ、漫画みたいな間抜けな青あざ状態にはならないだろう。
徐に腕の中の彼女が、もぞもぞと顔を上げた。その顔は、今にも泣きだしそうに歪んでいる。
「……痛かったですよね、これ。本当にごめんなさい、最低な家族で」
彼女の小さな手が、おずおずと俺の顔面へと伸ばされる。
触れて、くれるのだろうか。期待したけど、やっぱりその手は存分にためらって、あっさりと戻っていってしまった。
「あ……、いや。まぁ、でも、今は、痛みもそんなにないから」
彼女は更に、申し訳ないと詫び言を並べ立てている。いや、俺が聞きたいのはそこじゃなくて。
「あの、それはもういいから、気にしないでくれ。それよりも、俺が、こんな状態になる切っ掛けの、言葉、なんだが」
少しの間の後。
たちまち彼女の顔が面白いように真っ赤に煮あがった。何とか思い出してもらえたようで、安堵する反面、またしても緊張がぶり返してくる。