主任、それは ハンソク です!

「ぇえーっと、……ですね」

 動揺のあまりだろうか、彼女の声が裏返った。
 顔を更に真っ赤にさせてあわあわする、そんなポンコツぶりもいちいち可愛くてたまらない。俺はもう、人として完全に終わったらしい。

 今なら、少し前までのキヨスの気持ちが身に染みて良くわかる。

 あいつは好きな人を手に入れるためという、極めて個人的な理由で、大規模な企業買収をやらかした。

 曰く「それが一番手っ取り早いから」だ。

 その計画は、ヤツが中等部の頃には既にその頭の中にあって、それを俺とカジタツはあり得んと呆れ、更には、さすが小学生からの本仕込ストーカーだと、馬鹿にした。

 とんでもない。あいつはただ、好きな人の傍に行きたいがためにだけに、あいつの持ちうるあらゆる力やモノを駆使し、時にはそれを逆手にとって、彼なりの最善を尽くしただけなのだ。
 同じ状況なら、俺も当然そうするだろう。

「その、……返事は、ゆっくり考えて、それからで構わないから」

 俺の言葉に、思い切りホッとした顔でする、も。慌ててそれを取り繕うようにあわあわしている。その姿があまりに健気すぎて、見ていてつらい。
 そう、彼女は健気すぎる。だから、俺は。
  
「ただな、一つだけいいだろうか」

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