主任、それは ハンソク です!

               *   *   *

「んまいっ!」

 彼女がホッとしたように微笑んだ。

 そのまま食べると衣が分厚くて、二切れ目で飽きてしまうような代物が、ここまでのごちそうに変わるとは。

「衣が厚い分、ダシ汁がよくしみ込むんだな。このダシの味加減も丁度いい。驚きのうまさだ」

 しかも、普通のカツとじとは少し感じが違う。和食なのに洋風な、不思議な美味しさだ。

「七味唐辛子の代わりに、棚の中にあったあらびきの黒胡椒を使わせてもらいました」
「……なるほど、黒胡椒か」

 思わず彼女をまじまじと見る。

「ヨーコさんは芸術だけじゃなくて、こっち方面の創作も得意分野なんだな」

 いえいえ、と真っ赤になって恐縮する彼女に思わず見とれる。
 見とれながら、一体この人は、どれだけの引き出しを隠し持っているのだろうと思う。そして、その引き出しを俺の手で全て暴いてみたい、などと、そんな下種な事まで考えてしまう。

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