主任、それは ハンソク です!

「ああそうだ、忘れてた。これなんだけどさ、主任に渡しておいてくれる?」

 そう言って彼が差し出したのは、筒状のモノ。

「中身は?」

 受取ながらそう聞くと、突然、彼の表情が柔らかくなった。正直、綺麗な顔立ちだから、別に何とも思っていなくても思わずどきりとしてしまう。

「主任から依頼請けてた、夏フェアに使うロゴ文字」
「あ、あの。開けて、見ても、いいですか?」

 どうぞと言わんばかりに、清住さんがニッコリ微笑む。
 では、失礼します、と言いながらその筒から中身をとりだす、と。

「ふわぁ……」

 勢いのある墨文字で書かれた『旬』の一文字。墨の濃淡、掠れ具合。途端にこれをあしらった季節看板のイメージが、ぶわりと頭に浮かんだ。

「どう? いいっしょ」

 こくこく頷いて、ふと思う。

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