主任、それは ハンソク です!

「あの、これは、清住さんが?」

 一瞬、彼はポカンとして、ああそうか、と呟いた。

「得野さんって、うちの嫁さんと入れ違いだったか」

 そう、そうなのだ。
 この社内随一のイケメンさんは、この若さで実は既婚者、しかも社内恋愛からのゴールイン(もちろん久住情報)。

「えーっと、私が来たのが半年ほど前なんで、たぶんお会いしてないかと」

 そっか、と言うその横顔も何だかほんのり幸せそうで、本当に奥さんの事が好き、というのが滲んで見える。

「じゃあ、これ。汚しちゃいけないのでしまいますね」

 うん、任せた、というと彼はにこやかに部屋を出て行った。

「ほわぁ……、それにしても、すごいなぁ。……もぅ愛だよねぇ、愛」
「うん、確かにな。愛情と愛憎が滲み込んでいるような、豪快さだ」

 ふわああああああ、と私がその場から飛びのくと、ポカンとした顔で立ちすくむ主任が居た。

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