主任、それは ハンソク です!

「何だ、どうした?」
「お、お戻り、でしたか。ご苦労様、です」

 いえいえ、こちらこそ、とつられて主任がそう言うと、思わず互いに吹き出してしまう。

「凄いだろ、これ」
「はい、生鮮コーナーの上で、これがどんっと釣り下がっているのが、なんか、想像できます」

 おおおっ! とまたしても主任の大声。でも、何故か今回は驚かなかった。少しは慣れてきたのかもしれない。

「で、イメージは」

 主任の声がいつもの感じとちょっと違う。早口で硬い、仕事モードの時の声。

「深緑一面の畑の風景をバックに『旬』の文字です。文字の色は白抜きでもいいでしょうし、この墨を活かすなら白のぼかしで括っても面白いかもしれません」

 一瞬、驚いた顔で主任が私をまじまじと見る。

「……なんか、いつもと、雰囲気が違うな」
「へ?」

< 45 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop