主任、それは ハンソク です!
うんうんと久住先輩は瞳を煌めかせた。期待されている事は、なんとなくはわかる。でも、それに応えられない残念な私は、苦笑しながら視線をおろした。
「なんかさぁ、一部で噂になってんの。土曜日の午前中、主任が駅前のプラザホテルから女性と二人で出て来た、って」
……じょせいと、ふたり。
「主任は彼女をカジ……なんちゃらって呼んでて、相手の女性がまた、昨晩の二人の逢瀬の激しさを裏付けるような疲労感満載な雰囲気でぇ、そのまま二人連れだって、エキナカのカフェに入っていったという、ね」
少しの間の後、私はすぐに頭をあげる。
「金曜日の定例会は9時前にお開きになったので、だから、すみません。その後の主任の動向までは、私、わからないです」
すらすらと言い澱む事なく、面白いように言葉が出て来た。
こういう時、私は大抵感情的になっている。これも昔からの癖。私が感情的になればなるほど、意地悪な相手を喜ばせるのなら、冷静に淡々とつまらなそうにしていればいい。実際にそうすると相手の子はぐっと詰まって、面白いようにおずおずと引き下がった。