主任、それは ハンソク です!
よーこ、か。と呟くと。
テーブルから体を起こしつつ、何度か呪文のように、ようこヨーコ、と主任が繰り返す。
「とくのよーこ、音の運びは悪くないけど、母音のこもる音が多すぎて印象に残りづらいのかもしれないな」
「……母音が、こもる、音?」
U音とかО音とかな、と言いつつ、主任が出汁巻き卵の皿を引き寄せる。
「よしっ!」
突然、気合の入った主任の声に体がびくーんと反応する。
ああ、すまん。と慌てて侘びる主任の顔は、なぜか満面の笑みだ。
「これ、ここのイチオシだから食べてみ」
はぁ、と言いつつ、一切れ箸で摘むと。
「んっ!」
思いのほか力強い出汁の風味と上品な甘さが、嬉しくなるくらいの美味しさ。
うんうん、と激しく頷く私を見て、主任がしてやったりとばかりに笑った。
「そうか。ヨーコさんの口にも合ったか」