眠れる窓辺の王子様
「……いいんじゃないの、小説」
「ほんと? 完成したら、ミクも読んでくれる?」
身を乗り出してワンコみたいに人懐っこい笑みで聞いてきたハルカ。
「仕方ないな」と返事をすれば、一層嬉しそうに破顔した。
「どんなお話がいいかな。おれ、ファンタジーがいいな」
「だめ、恋愛小説一択。それ以外は私読まないから」
「やっぱりミクって恋愛小説好きなんだね」
「黙れ」
むうっと膨れたハルカを無視して、足元に視線を落とす。
ご機嫌にへたくそな鼻歌を歌いながらハルカは空を見上げる。
つられるように私も視線をあげた。
トルコ石のような空かどうかはさておき、確かに空は青かった。