眠れる窓辺の王子様




 「なに」

 『第一声がそれかよ。ほんとうに相変わらずだな、未来』




 スマートフォンの向こう側でクスクスと笑う声がして顔を顰める。



 『久しぶりの幼馴染涼太さまからの電話だぞ。ちょっとは喜べよ』

 「……切っていい?」

 『おっ、一応断りを入れるくらいは大人になったんじゃん。昔は容赦なく切ってたよなあ』



 唇の端がピクリと動く。



 「ふざけんな」と言い捨ててからスマートフォンを耳から離す。


 通話終了ボタンを押す寸前で「ごめん、ふざけすぎた!」と慌てた声が聞こえたので、渋々耳に戻した。



 「ほんとに何なの、さっさと帰りたいんですけど。定時上がりのあんたみたいなお役所勤めの公務員さまとは違って、忙しいんですけど」

 『そう皮肉言うなって、すぐに済むからさ』



 まだクスクスと笑う涼太は気に食わなかったが、黙って続きを促した。


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