眠れる窓辺の王子様
腕を組んで、駅の壁にもたれかかる。
切れかけてちかちかと光る白熱灯を、じっと見つめる。
しばらく沈黙が流れた、そして。
『俺、結婚することになったんだ』
真剣で、でも少し緊張を含んだ声が鼓膜を震わす。
タイミングよくホームに入ってきた電車の騒音が、私と涼太の沈黙をかき消した。
天井からぶら下げられている電光掲示板をぼんやりと眺めた。
「……そう、なんだ」
『おう。一応、未来には一番に伝えておこうかと思ってさ』
うん、そう頷いてから、「おめでとう」。
祝福の言葉を伝えた自分の声は予想以上に優しくて、騒がしいホーム内にその声は消えていく。
しかし涼太にはきちんと届いていたらしい。
少し嬉しそうに『ありがとう』と鼻を啜りながら言っていた。