眠れる窓辺の王子様
ぎゅっと自転車のグリップを握って、ペダルを踏みしめながらサドルから腰を浮かせた。
通学路の途中にある大きな公園で、その真ん中に建てられている錆び付いた時計台を見あげた。長針と短針が指し示す数字に一層焦りが生じる。
「やばい、あと二十分!」
ペダルを動かす足を一層早める。
しかし急いでいる時こそ、どうしてか信号に引っかかる。
何度目かの信号待ちにイライラが募り、グリップを握る指が自然とリズムを取り始める。
ひゅう────、と冷たい風が吹き、奥歯を噛み締め肩を竦め両手をブレザーのポケットに突っ込む。
大きくため息をつき、信号機を睨みつけた。