眠れる窓辺の王子様
三章 薄暮の記憶
ゴールデンウィークに入った。
学校に行く必要がなくなったため、一歩も家から出ることなく一日を淡々と家事をこなして過ごした。
しかし結局は、ゴールデンウイークの最後の日になって冷蔵庫の食糧が尽き、久しぶりに靴に足を通し、自転車のカギを外したのだ。
「……なんでこうなるかな」
そして一時間後。
私は前かごに買い物袋、後の荷台にはハルカを乗せて自転車を漕いでいた。
「嬉しいなあ、ミクに会えるなんて。おれ、今日はついてるね」
機嫌よく下手くそな鼻歌をかなでるハルカを、ついさっき買い物帰りの道で拾ったばかりだった。
普段とは違ってハルカはクリーム色の大きなトートバッグを肩から斜めにさげていて、さっきから自転車を漕ぐ度にごつごつと私の脇腹に当たって痛い。