黒の死神-liar clown-
赤子だったライアーはすくすくと大きくなっていった

1歳で話せるようになったライアーは幼い子供のように演技した
幼い子供のように舌っ足らずで何を言っているか分からないよう元の世界の言語とごちゃまぜにして話した
ライアーが転生者だとバレないように


2歳になると両親の気を引くようにコップを壊したりハサミを振り回したりした
きちんと両親が怒れるかを試したのだ
両親はライアーを怒った
だが両親は絶対に叩いたり打ったりしなかった
ライアーをきちんと叱って何がダメだったか、どうすれば良かったのかを教えてくれた


3歳になると愚図らず聞き分けの良い子を演じた
そうすることで村人達が気味悪がるのは想定内
だが両親が愛してくれると分かっている
だからライアーは余計な負担をかけないように良い子を演じた


4歳で村の子供達から虐められる事になった
ライアーは虐めを予想はしていたから気にしなかった
村の子供達に虐められている間はごめんなさいごめんなさいと謝り続けた
反撃は出来た
だけどしなかった
ライアーは暇があると魔の森に入って狩りをするようになった


5歳になると村人達も寄ってたかってライアーを虐めた
ミリアやライトールにバレないように虐めた
ライアーは気にしなかった
殴られながら跡が残らないかの心配をしていた
森に入って狩りをしたライアーのステータスは爆発的に伸びたがまだライトールやミリアには負ける
ライアーはボロボロの体を治癒魔法で治して、綺麗に微笑みながら狩りを続けた


ライアーは前髪を伸ばすようになった右目を隠すように
余計な情報が入らないように
余計な情報で脳に刺激を与えないように



6歳になったライアーはふとこう思った


「そうだ!村を滅ぼそう!!」


理由はない

特に意味もない

復讐するつもりもない

だけど唐突に決心した


そうと決心すれば早かった


ライアーは深夜、両親が寝ているのを確認してベッドから抜け出しアイテムボックスの中から大鎌を取り出した

「ばいばい父さん愛してたよ」

にっこりと微笑んでそう呟いたライアーはライトールの腹を裂いた
父は鈍い痛みに目を覚ました
そしてライアーの手に握られている大鎌を見て状況を素早く把握し大声を上げてライアーに反撃しようとした

「ミリア!逃げろ!!ライアー、何故…」

ミリアがライトールの叫びに反応して飛び起きた
そして魔法で攻撃しようとした……が、出来なかった
愛する息子が何故愛する父親に斬りかかっているのか理解出来なかったのだ

ライアーはライトールの攻撃を軽々とワルツのステップを踏むかのように避け、ライトールに斬りかかる

と同時にミリアを影魔法でその場に縛りつけた
ミリアは動揺してなかなか魔法が解けない

いくらAランク冒険者だとしても腹を裂かれている状態で、しかも自分が愛している息子に斬りかかられている状況で普段のように戦えるはずがない。
表面上は何でもないかのようにライアーの攻撃に対応しているが内心は疑問ばかりだ

そしてついにライトールは致命的なミスをしてしまう
ライアーから目を離してしまったのだ
それはほんの一瞬、だけどライアーにはそれで十分だった

ライトールの視界から消えたライアーは一瞬でライトールの目の前に移動するとライトールに向かって綺麗に笑ってみせた
そして口をパクパクと動かし…

(バイバイ父さん。おやすみなさい)

呆気にとられたライトールはライアーの大鎌が大きく振り上げられた事に反応が遅れた。武器を振り上げる事も、攻撃を避ける事すら出来ずに腹を深く抉られて絶命した


そこでようやくミリアが影魔法を解いた
ライアーはミリアの方を振り向く
ライトールの血で濡れて真っ赤に染まった服
顔に飛び散っている血飛沫
倒れているライトール
そしてそんな状況で笑っているライアー

「ライアー、なんで大鎌なんて持ってるの?なんで父さんの、ライトールのお腹が裂けてるの?なんで笑ってるの?なんで?ライアー?何かの冗談でしょう?今なら母さん許してあげるわ。ねぇ、なんで?なんでこんなことしたの?答えなさい。答えなさい!答えろ!!!ライアー!!」

ミリアはそう叫ぶと同時にライアーにエアアローを撃ち込んだ

「あのね母さん!僕ね!村を滅ぼそうって思ったんだ!」


ライアーは大鎌を振り回して風矢(エアアロー)を弾き返す

まるでピクニックに行こうと誘うかのように楽しそうで弾んだ声だ

「僕を虐めた村人も虐めてない村人も全て殺そう!皆殺そう!そうすれば誰も家族と離れ離れにならない!僕を産んでくれた母さんも僕を育ててくれた父さんも殺そう!僕を愛してたんだから僕に殺されるのは本望だよね!!って!あははは!」

「くっ…狂ってる…狂ってるわ!あなたライアーじゃない!あんたはライアーじゃない!私の息子をどこにやった!私の息子を返せ!!!私の愛するライトールを返せぇぇ!!!」

ミリアはライアーに|風の咆哮(エアブレス)を撃ち込み、続けて水爆弾(ウォーターボム)を撃ち込んだ

ライアーは口角を上げて嗤う

「あははは!楽しい!流石母さんだ!流石A級冒険者!流石!!正面からじゃ僕には敵わないなぁ!」

「なら私のライアーを返せ!!返せ!」

「だけどね、母さん」

正面じゃなかったら勝てるよ!
あっははっ

ミリアの背後に回り込み首に大鎌を振り下ろした

「ばいばい母さん愛してたよ」

「しまっ…ライトール、、ライ、アー、、、愛し…」

ザンッ






ライアーは血で濡れた大鎌をご機嫌に振りながら村を徘徊した。

そして自分の家に着くととミリアとライトールの寝室に走って行く


「あははは!楽しいね!ね!そう思うでしょ?母さん!父さん!」


腹を裂かれ血だらけで眠る父と頭を切り落とされて眠る母を見つめて恍惚とした顔でライアーは微笑んだ

ライアーは父と母をぎゅっと抱きしめた後、家の中を探っていく

「旅に大事な~っと!あった!身分証!あははは!あとは~包帯と、ポーションにお金!」

ライアーは次々と家の中の物をアイテムボックスに入れていく


やがてライアーは立ち上がりライトールとミリアにもう一度ぎゅっと愛を確かめるように抱きつく


「ばいばい。ありがとう。愛してたよ」



外に出ると初級炎魔法(フレア)を家に放つ

それは燃え上がって隣の家に燃え移り、やがて生存者のない村を燃やした


「綺麗な炎。

僕、この村も村の人達もなんて名前だったか忘れたけどとても感謝してたと思う。父さんと母さんの名前ももう忘れたけど、僕とても感謝してたと思うよ。幸せだったと思うよ。ありがとう」



ライアーは綺麗な顔に誰もが見惚れるような美しい笑みを浮かべた


そしてニコニコと笑いながら去っていった


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      報告書

水月の八つ、深夜ウーラン村全焼

深夜何者かがウーラン村に火を放った
ウーラン村にはA級冒険者【暴雷】と【翡翠の魔女】が居たが亡くなったと見受けられる
また、その子供も予期せぬ火事にて亡くなった(・・・・・)と見受けられる

村は全焼、生存者無し(・・・・・)という事が調査にて分かった

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