黒の死神-liar clown-
深夜。森を歩く人影があった
普通は夜に森を訪れる事などない。夜は危険だからだ
だがライアーはそんな事お構いなしに歩く
知の魔眼は使わず元殺し屋の感覚を研ぎ澄まし、五感のみで歩いていく
崖から落ちる可能性もある。
だがライアーはのんきに鼻歌を歌って歩いていった



足音は全くしない




「さてと。どこに行こうかなぁ」

ご機嫌な様子で大鎌をアイテムボックスにしまい、鼻歌を歌う

「あはは~楽しいなぁ今までこんなに楽しかった事ってあったかなぁ?」

首を捻るライアー
その時ふと自分が血塗れだということに気がついた

「あー、こんな事ならマジックアイテム?のコート着ておけば良かったなぁ」

どうやらお気に入りの服だったようだ
機嫌が悪くなったライアーはアイテムボックスを開くとコートとブーツ、タオルと替えの服を取り出した

「あーあ。せーっかくいい気分だったのに」

ムスッと頬を膨らませると近くに川がないか探しだした

耳を澄ますと木々のざわめきと川のせせらぎが聞こえる
現在ライアーは村を離れ適当に森の中を歩いている
ライアーは川のせせらぎが聞こえる方へ歩き出した



川が流れている
とても透き通っていて綺麗だ
だがライアーはそんな事には目もくれずさっさと水を浴びに川へ入ってしまった
どす黒い赤色の血が川の水を汚していく

「あーもう!血なんか浴びるんじゃなかった!僕っていっつもそうだ…興奮したら周り見えなくなる……悪いクセだ。直さないと」

じゃないと楽しい遊び《暗殺》が出来ないしね

クスクスと笑うライアー

それは美しい光景だったであろう
月明かりに照らされ肩にかかるくらい伸びた漆黒の髪と白い透き通るような肌がキラキラと輝き、美しい顔立ちをした少年が楽しそうに水浴びをしているのだ
美しくないわけがない
その美少年から落ちていくおびただしい血を見なければの話だが


ライアーはタオルで丁寧に髪の毛を拭いていく
ふと髪の毛を見た

「もう前髪伸ばす必要無くなったよね。包帯が手に入ったし」

そう言うとライアーは大鎌をはさみに変える

この大鎌は変形自在なのだ
例えレイピアでも大剣でも想像さえ出来れば変形させることが出来る
そこに質量なんて関係ない

「あ、これ大きなはさみが武器とか楽しそうだなぁ」

にこにこと楽しげに笑うライアーははさみで前髪を切り始めた

器用に右手だけで髪の毛を切り終わると、ふと左手を見る

(魔力操作で左手作れるんじゃ?それに作れなかったとしても想像魔法がある。やってみる価値はあるかも)

ライアーは魔力を左手に集中させた




30分後
ライアーは生まれて初めて挫折した

(なんで?なんで出来ないの?想像魔法だって何故か不発。なんで?)

ライアーは魔力を左手に込めながら右目で集中して見た
知の魔眼をまだ完全に制御出来ていないライアーは倒れそうなのをぐっとこらえて、目を凝らす

魔力がうねうねと左手に集中するが、すぐに分散してしまった
それは何度やっても同じだった

(なるほど。魔力を固形にするのは無理なんだ)

ライアーは残念そうに左手を見続けた
想像魔法は単純にライアーの魔力が足りなかっただけだった

(ふーん。僕の左手を作るのはMPが最低でも1800は必要なのか)

ライアーの今のMPは135。
まだまだ届いていない
ライアーは使っていなかったポイントを使うことにしたらしい

ライアーがとったのは経験値倍増(-40)と魔力増加(-55)
残りポイントは140となった

「さて、そろそろ着替えないと風邪を引きそうだ」

ケラケラと笑いながら服を着てコートを着る
するとコートはピッタリとライアーの体に合った
だがピッタリなため、左手首がないのが一発でばれてしまう

ライアーは一瞬悩むと袖を長く伸ばす
ダルンと伸びた袖を見てコクリと頷くと大鎌を出し、袖の上から大鎌を握り大鎌を振り回す
少し扱いにくそうだが大丈夫なようだ

「いちいちアイテムボックスから取り出すの面倒くさいなぁ…そうだ!」

ライアーはコートを少し変形させ、中に短剣を仕舞えるスペースを作ると大鎌を短剣をしてコートの中にしまった

満足そうに頷く

それからブーツを履き、包帯を右目をぐるりと巻いた
操作が出来ない状態で右目を使うのは難しいと考えたからだ
あわよくば包帯の下からうっすら発動出来ないかと考えていた

「あ、出来た」

出来たようだ

それにより気分が急上昇したライアーは目を輝かせながら狩りに行く

お腹が空いたからだ


近くにいたラビティの頭をはね飛ばすと血抜きをして皮をはぎ内臓を取り出す。そして肉を初級水魔法(ウォーター)で洗い木の棒に肉を刺して初級炎魔法(フレア)を使って丸焼きにする
ふわりと香る食欲を増量させる匂いがライアーの腹を刺激する
ジッと肉を見ていると知の魔眼が反応する
肉の各部位に×や△や◎がかかれる。焼き加減がしっかりと分かるようになっているようだ

(やっぱり便利だなぁ)

そうこうしている内に全ての部位が◎になった。どうやら焼き上がったようだ
ゴクリと唾を飲み込み、こんがりと焼きあがったラビティの肉をガブリとかぶりつく
何の味付けもしていないのにジューシーでピリッとしたスパイスが舌を刺激する
ライアーは食欲に誘われるがまま二口三口とかぶりついた


食べ終わると何とも言えない幸福感と満腹感がライアーを満たした

ライアーは機嫌よく小鳥たちのさえずりに誘われるがまま歩き出した

「そうだ!王都に行こう!」

思いついたが早いか、楽しげにスキップで獣道を進む


《king king 嘘つきking
拍手喝采見破って
hurtのaceを切り札に
余裕綽々薄ら笑いで
cloverとspadeは傍観者
冷静沈着見守るの
queen queen 罪人queen
さぁ今こそ断罪だ
joker joker 首切りjoker
Off with her head!!(首をはねろ!)》


スキップしながらライアーが作っためちゃくちゃで残酷な歌詞の歌を嬉々として歌う

《Off with her head!!(首をはねろ!)》


そうライアーが歌った時だ

突如ねっとりとした不快な視線がライアーに絡みつく


(気持ち悪い。どこにいる)

一気に不機嫌になったライアーは怒気を隠しながら気配察知を発動した

(右か…16人…多分盗賊だね)

ペロリと唇を舐める


八つ当たりに盗賊狩りと洒落込もう


小声でそう呟くと道端に落ちていた石を思いっきり盗賊のいる方へ投げる

それは空気を切り裂くように飛んでいき、ライアーの行動を伺っていた1人の盗賊の頭を貫いた


「shall we dance? 僕と一緒に踊ろうよ《殺し合おう》」


にっこりと綺麗な笑みを浮かべて嘲笑うライアー
キラリと赤く瞳(・・・)が光った…

盗賊達は深紅の瞳(・・・・)に目を奪われる
それは神秘的なまでに美しく、そして触れると火傷するような熱さを持っていた

瞳に魅入る盗賊の前には先ほどまで遠くにいたライアーの姿
正気に戻った盗賊が攻撃しようと剣を構える

短剣がぐにゃりと歪み大鎌に変形する

「checkmate」

耳元でライアーの楽しげな声が聞こえた





盗賊のリーダーは腰を抜かした
何故なら10もいかない少年が仲間の首を楽しげに笑いながら一斉にはねたからだ
辺り一面赤い液体で広がる
そしてボトボトと仲間の首が落ちていった


盗賊は思った

こいつは俺たちが手を出してはいけない奴だった
これは人じゃない
大きな鎌を振り回して首をはねる死神だ

と。


「ねぇ、お仲間さんのように死にたくなかったらさぁ。僕のお願い事、聞いてくれない?」



年相応の可愛らしい顔(・・・・・・・・・・)をコテンッと傾けた。サラリと蜂蜜色の髪(・・・・・)が流れる。
ライアーは深紅の瞳(・・・・)を細めてにっこりと微笑んだ
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