死にたがりな彼女

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【世間知らずな彼女】


僕たちを乗せた電車がゆっくりと進みだし、やがて、加速しだす。


時間はもうすぐ六時。


太陽は既に沈んであたりは段々と薄暗くなってきている。


僕はあれからソウェルに言われたとおり、メルヴィー街へと向かう電車へと、ソウェルを背負って乗り込んだ。


電車は各駅停車のゆっくりとした電車。


僕たちの住んでいる場所はメルヴィー街から少し離れた場所にあって、メルヴィー街に着くのは二時間後くらいだろうか。


ソウェルは心地よさそうに、シートと僕に身体を預けて安心しきったように眠っている。


二人掛けの椅子が二つ、向かい合わせに設置された四人一部屋が一両に四部屋、五両からなるこの電車には数えるほどしか客が居ない。


誰もメルヴィー街には行きたがらない。


確かに品物は揃っているけど、他の街でも不自由はないし、あんな物騒な街、誰も近づきたくない。


それが一般人の意見で、わざわざメルヴィー街に繰り出すのは僕たちと、悪行を働こうとする薄汚い人間くらいな物だ。


一日五回、何らかの事件が必ず起こるし、阿片屈があるし、娼婦・男娼がひしめき合うし、気を抜けば荷物を盗まれるし、喧騒は絶えず、怒声はまるで小鳥の声のように身近だという。



そんなところに、こんな世間知らずの少女を連れて行って大丈夫だろうか。



無防備に寝顔を見せている少女を眺めながら、僕は外套(マント)で少女を包んでやった。










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