エリート弁護士と婚前同居いたします
姉とともに暮らしているこの部屋は小さめの二LDK。最寄駅からは徒歩十分ほどで築五年と比較的新しいマンションだ。大学時代に住んでいたマンションが手狭になり、姉の就職を機に引っ越してきた。証券会社に勤める姉の手厚い住居手当もあり、姉妹ふたりで家賃を負担して暮らしてきた。

私ひとりのお給料ではとてもではないけれどこの部屋の家賃は払えない。姉はそのおっとりした性格からは想像できないけれど、仕事がとても好きな人だ。就職してすぐ侑哉お兄ちゃんと結婚すると思っていたのにその予想に反して姉は、仕事を楽しんでいた。

「……む、無理……」
 顔色を変えて思わず漏らした私の一言に姉が申し訳なさそうに言う。
「そうよね……」
 家賃だけではない。そもそも私は家事全般が苦手なのだ。できないわけではないけれど姉のように手際よくこなせない。今頃になって姉に甘えてばかりだった己を恨みたくなる。

 実家に戻る?  
 今のところ最適な選択肢はそれしかない。大手メーカーの同じ会社に勤務している両親は多忙だけれど、実家に戻ればひとりで家事を負担しなくてすむし、何より家賃が発生しない。

でも通勤時間は恐ろしいほどかかってしまう。ただでさえ早起きが苦手な私にそんなことは不可能だ。
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