エリート弁護士と婚前同居いたします
それからは慌ただしい毎日を過ごした。引越しの日は六月半ばの日曜日に決めた。両親には姉が伝えてくれた。侑哉お兄ちゃんも口添えしてくれたらしく、両親から許可が下りたと姉から報告を受けた。未婚の男女が暮らすというのにそこはいいのだろうか? 両親の信用の基準がよくわからない。まあ、今さら反対されてもどうしようもないのだけれど。
引越し当日はあいにく両親ともに仕事のため、手伝いにこれないらしい。不動産業者や引っ越し業者に連絡をし、住民票の異動など細かな手続きの確認をし、職場にも報告して、休日は荷造りに没頭した。
まずは私だけが先に彼の自宅に引っ越す。家事スキルのある姉はお兄ちゃんの予定と合わせて後日、この部屋を引き払うことになった。長年住み慣れた家を離れることは思いのほか寂しかったし、不要な荷物の多さにも驚いた。せっかくなのでこの機会にできるだけ処分をすることにした。それでなくても上尾さんの豪華なマンションには不似合いさ、場違いさが否めない。数年前に行った引越しの記憶は朧気で、こんなにも大変な作業だったかなと辟易していた。
当日は梅雨の時期にしては珍しくカラリと晴れ渡っていた。その分暑さも厳しかったけれど、上尾さんは多忙なはずなのに朝から手伝いに来てくれていた。黒の半袖Tシャツにチノパンといった私たち姉妹とほぼ変わらない動きやすい服装。それでも彼はやはりカッコ良かった。彼には手伝いにきてくれたお礼を伝えた。
作業は順調に進み、お昼前になるとほぼ荷物は運び出されていた。引越しトラックが彼の自宅へと向かうのをそっと見送る。
「お姉ちゃん、本当にありがとう」
今すぐ姉が大阪に行ってしまうわけでもないのに、感傷的な気持ちが込み上げて泣きそうになってしまう。
「やだ、何泣いているの。まだここにいるから大丈夫よ。何かあったらすぐに言うのよ。私はずっと茜の味方だから」
まるで娘を送り出す母親のような台詞を言って、姉が私をギュウッと抱きしめた。それから姉は私の身体を離して、五メートルほど先に停めていた車の脇に立つ上尾さんの方に向かい、何やら話していた。
引越し当日はあいにく両親ともに仕事のため、手伝いにこれないらしい。不動産業者や引っ越し業者に連絡をし、住民票の異動など細かな手続きの確認をし、職場にも報告して、休日は荷造りに没頭した。
まずは私だけが先に彼の自宅に引っ越す。家事スキルのある姉はお兄ちゃんの予定と合わせて後日、この部屋を引き払うことになった。長年住み慣れた家を離れることは思いのほか寂しかったし、不要な荷物の多さにも驚いた。せっかくなのでこの機会にできるだけ処分をすることにした。それでなくても上尾さんの豪華なマンションには不似合いさ、場違いさが否めない。数年前に行った引越しの記憶は朧気で、こんなにも大変な作業だったかなと辟易していた。
当日は梅雨の時期にしては珍しくカラリと晴れ渡っていた。その分暑さも厳しかったけれど、上尾さんは多忙なはずなのに朝から手伝いに来てくれていた。黒の半袖Tシャツにチノパンといった私たち姉妹とほぼ変わらない動きやすい服装。それでも彼はやはりカッコ良かった。彼には手伝いにきてくれたお礼を伝えた。
作業は順調に進み、お昼前になるとほぼ荷物は運び出されていた。引越しトラックが彼の自宅へと向かうのをそっと見送る。
「お姉ちゃん、本当にありがとう」
今すぐ姉が大阪に行ってしまうわけでもないのに、感傷的な気持ちが込み上げて泣きそうになってしまう。
「やだ、何泣いているの。まだここにいるから大丈夫よ。何かあったらすぐに言うのよ。私はずっと茜の味方だから」
まるで娘を送り出す母親のような台詞を言って、姉が私をギュウッと抱きしめた。それから姉は私の身体を離して、五メートルほど先に停めていた車の脇に立つ上尾さんの方に向かい、何やら話していた。