君と永遠に続く恋をしよう
俯くように目線を下げ、彼が椅子から立ち上がるのを待った。



「奈央さん」


立ち上がりかけた相手に名前を呼ばれ、ドキッとしながらも上目遣いに顔を見遣る。


「はい」


一応返事はしてみると、彼は躊躇うように唇を結んだ。
さっき私に拒否されたからなのか、一旦黙ってから続けた。


「ちょっと…外で話さないか」


家の中ではなく外で…と示す彼に、戸惑いながら目線を逸らす。頭では直ぐに拒否したいところなんだけど、それをすると、返って何かがあったと思われても嫌だ。


「ええ。いいですよ」


明るめの声で応じ、リビングのドアを開けると、父を寝かせたらしい母が寝室から廊下へと出てきて、「あら、お帰りですか?」と問いかけた。


「…ええ、ご馳走様でした。急に来たのに、片付けもせずにすみません」


きちんと母に向き直って頭を下げる桜庭さん。母は「いいえ」と微笑み、「またおいで下さいね」と誘った。


「奈央、お見送りしてね」


自分は後片付けをするから…と話す母にもう一度頭を下げ、顔を上げると桜庭さんは踵を返して玄関へと向かう。

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