皇帝陛下の花嫁公募
 女官から案内をされたものの不充分で、そもそも最初からちゃんと教える気もなかったようだ。だから、リゼットはナディアと二人で宮殿の探検を楽しんでいた。

 見取り図もちゃんと作った。場所によっては入ってはいけないところもあり、衛兵に止められたりしたが、何があるのかを訊いてみると、ちゃんと答えてくれた。

 女官より衛兵のほうが話しやすい。弓の腕前を披露とした話が兵士の間では流れているらしく、どうやって練習したのかと訊かれたりした。リゼットはそれを話す代わりに、宮殿内のちょっとした噂話や情報を聞き出すことにしていた。

 だいたい情報を集めたところで、テオとナディア、リゼットの三人で作戦会議を行う。誰かに聞かれると都合が悪いので、場所はリゼットの居間だ。

 三人はテーブルを囲んでいて、そのテーブル上にはリゼットが作成した宮殿内の見取り図を置いている。

 テオが腕組みをしながら口を開いた。

「結局、女官を束ねているのは女官長だが、その上に公爵夫人がいて、いろんな利権を握っているようだ。宮殿で生活のために使われる日用品や備品、食料品や衣料品もすべて公爵夫人を通さないといけないことになっている」

「だから、わたしに謁見しても無駄ってことなのね」

「商人は公爵夫人に会いにきて、金品を献上する。異国のめずらしいものや宝石などがいいらしい。仕立て屋は流行のデザインと布地を持って、ご機嫌伺いにやってくる。女官は宮殿に住み込んでいて、外にはあまり出ないから、公爵夫人の言いなりだ。不興を買ったら、ここではやっていけないからな」
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