皇帝陛下の花嫁公募
 リゼットは心から二人に感謝した。二人がいなければ、自分はこの宮殿で孤立して命を失っていたかもしれないのだ。

「助けが来る前に、少しでも仲間を増やしたいから、宮殿巡りは続けることにするわ。他にすることもないし」

「そのうちに陛下も帰っていらっしゃいますよ」

 アンドレアス率いる軍と隣国の軍はこう着状態になっていて、まだしばらくは帰ってこられないということだった。一刻も早く片がついて、アンドレアスだけでなく、軍の誰もが無事に戻ってほしいと、リゼットは願っていた。

 しかし、自分達がここで話し合ったようなことを、アンドレアスは信じてくれるだろうか。彼は公爵夫人やゲオルグとあまり親しそうではなかったが、一応、親戚なのだ。しかも、叔母と従兄弟で、かなり近い親戚だった。

 今のところ、危険があるのは自分だけだが、いつかは魔の手がアンドレアスにまで伸びてくる。それを思えば、やはりどうにかしてここでの権力を手にして、彼らを宮殿から追放しなくてはならない。

 権力はともかくとして、宮殿から追放するにはアンドレアスの力が必要だった。

 一体どうしたら……。

 彼らの弱みを握る。もしくは、こちらに悪意を抱いている証拠を握る。

 そのどちらかだ。

「情報がもう少し欲しいけど、今は身を守ることが先決ね」

 殺されてしまっては元も子もない。

 リゼットはかつてないほど危機に見舞われていた。
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