皇帝陛下の花嫁公募
 失礼すぎる……。

 そう思ったが、リゼットは口には出さなかった。女官がいきり立って何か言い出す前に、目で合図して止めた。母妃に至っては、もう諦めの境地だったようで、疲れたみたいにハンカチを額に当ててしまった。

「もう……帰りましょう。こんな侮辱を受けるいわれはないわ」

 母妃は小声でリゼットに囁いた。

「いいえ、お母様。それどころか、これはアマーナリアを中央に住む人達に知らせるいい機会かもしれないわ」

 リゼットは姿勢を正し、地図を覗き込んでいる目の前の男性達に向き直った。

「わたくしはそのアマーナリアの姫です。何かご質問は?」

 男性達ははっとしたように居住まいを正した。

「失礼致しました。あの……できれば身元を証明するようなものをお持ちではないでしょうか?」

 そう言われると思った。辺境国だからこそ、名前を騙られても判らない。いくら花嫁を募集したとはいえ、身元が確かではない者を受け入れるはずがなかった。

 リゼットは父王から手渡された書状を入れた筒を女官から受け取り、それを彼らに渡した。彼らはそれを確かめ、大きく頷いた。

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