MちゃんとS上司の恋模様
(あーあ、これでまた須賀主任の人気がググッと高まったな)
須賀主任の威圧的な態度が一気に中和されたのを見て、女性社員たちは頬を赤く染めている。
確かにあのギャップにはクラクラっときちゃうよなぁ、と納得していると、須賀主任は男性社員に答えを言った。
「そう。老舗というのは信頼の表れでもある。信頼がなかったら、ここまで続かなかったと思わないか? うちの教材を使うことへのメリットがあるということなんだ」
「はい」
男性社員が深く頷くと、須賀主任は自身も小さく頷く。
「確かに目新しいものに人の心は移り気やすい。だが、それを逆手に取れ」
「逆手……ですか?」
男性社員が小さく呟くと、須賀主任は手にしていた資料を揃えて男性社員に渡した。
「ああ。色々な分野において懐古の波は来ている。その辺りをこの園長に言ってみろ」
「は、はぁ……」
「懐古ブームというのをご存じか、と聞いてみればいい。どうして我が社が老舗幼児玩具会社と言われるのか。今一度考えてもらえ。ただ、すぐには切り替えということにはいかないだろう。そこで副教材としての存在意義などを訴えてみる。まずはそこからだな」
はい、と弾かれるようにオフィスを飛び出した男性社員を見送ったあと、私は腕を組んで唸った。
さすがは立て直し要員として本社から送られてきた人物だ。営業のツボというものを心得ている。
新しいモノに目移りしやすい園長だからこそ、「今の流行は懐古。古き良きものを見直すのもブームなんです」と言ったとしたら……一体その園長はどんな顔をするのだろうか。
そんなことをツラツラ考えていると、鬼軍曹が私を鋭い視線で射貫いた。