MちゃんとS上司の恋模様
須賀主任の分析にも頷けるが、男性社員の言い分もわかる。
この打開案が浮かばない限りは、顧客を奪回することは難しいだろう。
営業部の誰もが疑問を抱いていると、須賀主任はニッと口角を上げた。
「うちがどうして幼児教材の老舗と言われているのか、わかっているか?」
「えっと……それは幼児教材を始めたのがうちの会社が初めてだったから、ですか?」
「その通り。だが、いくら昔からやっていたとしても継続していくのは難しい。じゃあ、質問を変える。どうして継続しているんだと思う?」
「それは……長年培ってきた幼児教材のノウハウを受け入れられているからですか?」
不安げに答える男性社員に須賀主任は唇に笑みを浮かべる。
その笑みに驚きが隠せないらしく、男性社員は目を白黒させた。
もちろん私も驚いた。周りを見回しても男性社員も目を大きく見開いている。
初日より『鬼軍曹』の名に恥じない空気を一身に纏っていた須賀主任が笑った。
この人笑うんだ、それが私の感想だ。
きっと営業部の男性社員たちも同じことを思ったことだろう。
思っていないのは一握りの社員だけだろう。
私は、チラリと横に座る女性社員たちを見る。
彼女たちの様子を見て、小さく嘆息した。